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さびれた町の、貧しい家に生まれた少年(著者)がいました。
父親はアルコール依存症で、たびたび家からいなくなる。母親は深刻なうつ病で、寝込んだまま起き上がれない。
壊れた家族の面倒を見ながら、自分の一生もこのまま終わっていくのだろう——12歳の少年は、そう思っていました。
ある夏の日。彼はふらりと、一軒の手品用品店に入ります。そこにいたのが、ルースという中年の女性でした。
「人生を変えるマジックを教えてあげる」
ルースはそう言って、夏のあいだ、少年にある練習を教えます。
それは手品の種ではなく、自分の心の使い方でした。
特別な才能も道具もいらない、でも魔法のように現実が変わっていく。そしてその一つひとつが、のちに脳科学によって裏づけられていくことになります。
そこから先の人生は、物語のように展開していきます。
うだつの上がらなかった少年は医師の道へ進み、やがて脳外科医になり、事業でも大きな成功をおさめる。ルースに教わったとおりに、欲しかったものを次々と手に入れていくのです。
けれど——すべてを手にしたジムを待っていたのは、思いもよらない結末でした。
ここから先は、ぜひ本書で確かめてみてください。
著者のジェームズ・ドゥティさんは、スタンフォード大学医学部の臨床神経外科教授。驚くことに、この本はすべてジェームズ・ドゥティさんの実話です。
本書にはダライ・ラマ14世をはじめ、『EQ こころの知能指数』のダニエル・ゴールマン、『サーチ・インサイド・ユアセルフ』のチャディー・メン・タンらが賛辞を寄せ、世界20カ国語以上で翻訳されました。
脳外科医の本、と身構える必要はありません。
難しい専門用語はほとんど出てこず、少年に語りかけるルースの言葉で静かに進んでいくので、小説を読むように最後のページまで運ばれていきます。
そして読み終えたとき、「心を開く」という言葉の意味が、はじめて自分のこととして分かるはずです。
願いが叶うかどうかよりも、もっと手前にある大切なこと。それが、この本の本当のマジックなのだと思います。
願いを叶える方法を探している人にも、叶えたのになぜか満たされない人にも。
そのどちらにも、手に取ってもらいたい本です。
掲載日 2026年9月12日